2012年9月12日水曜日

TPP参加日本の選択

日経朝刊のコラム:経済教室で「TPP参加日本の選択」という記事が2012827日から3回の連載で掲載されました。第一回目は東京大学教授中川淳司氏で、第二回目は一橋大学教授石川城太氏で、最終回は青山学院大学教授岩田伸人氏でした。これらの記事は当該先生の名前の部分をクリックすればアップロードされます。

「TPP参加日本の選択」という興味津々の議題ですが、多くの人にとって先生方の記事の内容から全体像を理解することは難しいと思います。本ブログ記事では、やや独断と偏見のきらいはありますが、これらの記事のエッセンスの抽出を試みたいです。



農業問題について

昨年11月の時事通信の世論調査によれば、「日本もTPPの交渉に参加すべきだ」が52・7%、「参加すべきでない」が28・8%。今年7月の調査では「参加すべきだ」が57・6%、「参加すべきでない」が21・7%だった。反対グループは、大きく次に分類されるだろう。既得権益の保護派(農業関係者など)、反グローバル派、反米派、その他(食の安全を危惧するグループなど)である。ところが、昨年11月の時点では国会議員の半数近くがTPPに反対の立場をとっており、現在も根強い反対論がある。国会議員の反対の多くは、選挙基盤が農協、農家にあるためである。

仮に、TPPで利益を得る人が1億人いて、その利益の合計が10兆円、一方で損失を被る人が200万人いて、その損失の合計が8兆円としよう。この場合、経済全体としては差し引き2兆円の利益になるのでTPPを進めた方がよいはずだが、実際にはなかなか実現しない。それは得するグループの利益が1人あたり10万円なのに対し、損するグループ(つまり、農業関係者)の損失は1人あたり400万円にもなるからだ。既得権益がなくなるグループの損害額は、大きいので政治的圧力をかけるインセンティブが大きくなる。09年の総選挙時に民主党がマニフェスト(政権公約)に記した戸別所得補償制度は現状の農業者の減反(作付け制限)が条件だ。農業者の生産意欲とは無関係に作付面積の規模に応じて、ほぼすべての販売農家に所得補償をする仕組みであることから「バラマキ」と称された。農業の近代化を図って第一次産業の復活を目指す視点が多くの政治家には欠如いる。生産意欲のない「バラマキ」ねらいの農家を守ること、選挙に勝つことしか考えていないのが、TPPに反対の立場をとる国会議員である。

仮に日本のTPP交渉参加が今年か来年としても、協定発効までに1~2年、さらに関税貿易一般協定(GATT)第24条に基づけばTPPの完成までに10年かかるので、TPPの完成時期は2024~25年となる。そのとき、農業の近代化を図って第一次産業の復活を目指す軌道に乗っているのだろうか。



TPPとは

米国はTPPを、広範囲かつ高水準の貿易と投資の自由化を実現する21世紀のFTAのモデルと位置づけている。TPPをテコに世界貿易秩序が再構築されつつあり、日本がそこから排除される不利益は計り知れない。まず、TPPのルールづくりに関与するという観点が必要だ。TPPは他のFTAよりも高度な自由化を目指しており、そのルール形成が今後のアジア太平洋地域の通商秩序を大きく左右する。従って、交渉時点でのルール形成への積極的な関与が日本にとって極めて重要である。

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