2012年8月25日土曜日

消費増税に伴う「あるべき税制改正」その4(最終回)

わが国の深刻な財政悪化を改善するため、消費増税は不可避な選択肢の一つであると多くの国民は考えています。今回の消費増税によって5%の税率が20144月に8%に、1510月には10%に上がります。計算上は、消費税による10兆円余りの税収が倍の20兆円になるはずです。本連載では、消費税という税の本質から派生的に発生する問題を取り上げてみたいです。出来れば、その問題がもたらす影響をマイナスの影響でなく、プラスの影響に導くための税制改正についての提言もしたいです。

TPPによる関税ゼロの落とし穴

新聞紙上で、コンニャクの関税は1,706%、コメの関税は778%、砂糖の関税は305%と報道されています。日本が課する輸入関税は非常に高いとの印象を与えます。ですから、TPPに参加して関税障壁が取り払われれば、日本に入ってくる輸入製品の価格は安くなり、消費者にとってプラスの面が大きいと思わせます。しかし、それは大きな誤解です。

日用品の輸入に関わる関税は、ほぼゼロから10%です。そして、多くの輸入品の関税は、既にゼロになっています。そして食卓に上る野菜の関税もゼロから3%なのです。極端な言い方をすれば、TPPに日本が参加した場合、関税障壁に関する問題で難航する品目はコメだけです。本稿はTPPに参加した場合のプラス、マイナスを議論することを目的としていないので、TPPに関する更なる議論は別の機会にしたいと考えています。本稿で認識して欲しいことは、仮令、TPPに参加してもコメを除いた輸入製品の価格はあまり安くならないということです。むしろ多くの輸入品の価格は消費増税によって値上がりします。3%の関税が課せられる野菜を輸入した場合を例にして説明します。また、輸入価格は100円とします。

l  消費増税前の取扱い 
輸入価格                100
関税(3%)                   3
通関後の価格         103
輸入消費税(5%)         5
輸入価格                108

l  消費増税後、TPPにより関税がゼロとなった場合の取扱い
 輸入価格                 100
関税(0%)                   0
通関後の価格         100
輸入消費税(10%)      10
輸入価格                110

消費税で注目すべき点として、外国から輸入された製品は未だ販売されていなくても、日本で荷揚げされた時点で消費税が課せられることです。これが上記表で示した輸入消費税です。ですから、輸入商品は消費増税の影響が直接的に反映されます。現状の関税率の中央値が5%前後であることを考えると、TPPによって関税がゼロとなっても輸入商品の値下がりはあまり期待できません。

蛇足ですが、TPPによってコメの関税778%がゼロになったら、コメの輸入価格は劇的に下がります。しかし、「農民を殺すのか!」の声をマスコミ、政治家が代弁することは、容易に想像できます。ですから、日本がTPPに参加しても、コメの関税がゼロになることはないと考えます。

TPPによる関税ゼロに惑わされないことです。消費増税の影響を見落すと庶民は、大きな落とし穴に落ちてしまいます。

 本4回の連載で、今回の消費増税は、穴の空いたバケツに新たに水を入れるようなものであることがお判りいただけたと思います。しかし、穴の空いたバケツに水を注ぐ馬鹿はいません。消費増税が不可避な選択肢の一つであるなら、現状の消費税が抱える制度上の問題を解決すること、つまり穴の空いたバケツの穴をふさぐことが必要です。

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