2012年8月7日火曜日

消費増税に伴う「あるべき税制改正」その2

わが国の深刻な財政悪化を改善するため、消費増税は不可避な選択肢の一つであると多くの国民は考えています。今回の消費増税によって5%の税率が20144月に8%に、1510月には10%に上がります。計算上は、消費税による10兆円余りの税収が倍の20兆円になるはずです。本連載では、消費税という税の本質から派生的に発生する問題を取り上げてみたいです。出来れば、その問題がもたらす影響をマイナスの影響でなく、プラスの影響に導くための税制改正についての提言もしたいです。


 消費増税による1兆円の益税は誰の手に

 財団法人関西社会経済研究所の鈴木善充氏が「消費税における益税の推計」(『会計検査研究』第43号)という論文の中で益税を推計しています。それによりますと、消費税率の10%への引き上げが比例的に増加すると仮定するならば約1兆円規模の益税が毎年発生すると推計しています。

益税とは、小規模事業者に係る納税義務の免除、簡易課税制度、仕入税額控除での95%ルールの取扱いから、消費者の支払った消費税が国庫に入らず、事業者の手元に残ってしまうことを言います。

小規模事業者に係る納税義務の免除とは、課税売上が1,000万円以下の事業者は、消費税の納付義務が課されません。つまり、消費者が支払った消費税は、国庫に納められないで、小規模事業者の手元に残ります。これは脱税ではありません。消費税法で認められた措置です。

簡易課税制度とは、課税売上が5,000万円以下の事業者は、簡易課税制度の届出をすることで、仕入税額控除の計算が不要となります。小売業であれば、消費者が支払った消費税の20%を納付すれば、消費税を適正に申告したと見做される制度です。実証的検証によれば、本来の消費税の計算方法で算定された納付すべき消費税額は、簡易課税制度で申告された税額より大きいです。つまり、その差額は、簡易課税制度を申請した事業者の手元に残ります。これも脱税ではありません。消費税法で認められた措置です。

仕入税額控除での95%ルールとは、課税売上が5億円以下の事業者に対して適用されるルールです。当該事業者の課税売上割合が95%以上である場合、その課税年度に仕入れ等に関わる消費税全額を控除できます。消費税の基本の取扱いでは、控除できる仕入等に関わる消費税は、課税売上割合に対応する仕入れ等に関わる消費税であり、支払った消費税全額ではありません。最大5%の仕入れ等に関わる消費税が余分に控除できるため、消費者が事業者に支払った消費税を国庫に納めないで済みます。やはり、これも脱税ではありません。消費税法で認められた措置です。

しかし、消費者が支払った消費税が国庫に納められないで、事業者の手元に残ること自体釈然としません。この釈然としない問題は、わが国が採用しているアカウント方式(帳簿方式)から発生しています。消費税の基本的な仕組みは、製造業者、卸売業者、小売業者と製品・サービスが移転するにつれて消費税が課されます。その負担が次々に転嫁され、最終的には消費者が負担することになります。その過程での課税の累積を排除するため、事業者は自分の売上げに係る消費税額から仕入に係る消費税額を控除した額を納税することになっています。この控除する消費税の計算は、仕入にかかる帳簿に記載した数値で事足りることとしています。問題は、事業者が記帳する帳簿の体裁や様式が様々なことから発生します。消費税を含めた金額で売上、仕入を記帳している事業者がいます。その事業者の売上と仕入に課税売上(仕入)と非課税売上(仕入)が混在する場合、正確に受取った消費税と支払った消費税を把握することができません。ですから、益税が生じる余地が生まれます。益税を無くすためには、アカウント方式は改めるべきです。

消費税は、多くの国で採用されていますが消費税とは呼ばれないで、広く付加価値税と呼ばれています。極端に言えば、付加価値税を採用している国でアカウント方式を採用している国は、日本以外ありません。その他の国は、すべてインボイス(伝票)方式をとっております。台湾で採用しているインボイス(伝票)方式を参考にしながら説明します。
【税務署からインボイス用紙を購入し、それは3枚つづりになっています。一枚は発行した会社控え、二枚を販売した会社に渡し、そのうち一枚を税務署に申告の際に添付します。
 つまり、税務署に全ての取引のインボイスが蓄積され、税務署内で反面調査が出来るため、このインボイスを発行したものを売上にあげないとすぐに税務署にばれる仕組みになっています。また、法人はこのインボイスがないと、税務上経費として認められません。このインボイスは連番になっていて、その番号が宝くじになりますので、個人の人も必ず受け取るようになります。宝くじの一等は日本円で約700万円ぐらいだそうです(参考資料KPMG「中華民国台湾投資環境案内20032004年度版」)】

上記から推測されるようにインボイス方式の良い点は、益税の余地を無くすことです。正直者が馬鹿を見ない社会を作ることが大事です。消費増税の機会に、アカウント方式を改め、インボイス方式に変更すべきです。消費増税よって益税が増える事態は、厳に避ける必要があります。

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