2012年8月1日水曜日

消費増税に伴う「あるべき税制改正」その1

わが国の深刻な財政悪化を改善するため、消費増税は不可避な選択肢の一つであると多くの国民は考えています。今回の消費増税によって5%の税率が20144月に8%に、1510月には10%に上がります。計算上は、消費税による10兆円余りの税収が倍の20兆円になるはずです。本連載では、消費税という税の本質から派生的に発生する問題を取り上げてみたいです。出来れば、その問題がもたらす影響をマイナスの影響でなく、プラスの影響に導くための税制改正についての提言もしたいです。

派遣社員冬の時代へ

正規社員(正社員)と非正規社員(契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員)との間に賃金、社会保障の取扱いに差別があることが問題になっていますが、消費増税は非正規社員の内、派遣社員に厳しい事態が想定されます。“派遣切り”が今まで以上になされる可能性が増します。その理由は、給与の支払いは、消費税が課されませんが、派遣会社への支払いは、消費税の対象となるからです。

多くの企業は、人件費カットのために積極的にアウトソーシングをしてきました。今回の消費増税は、派遣会社から派遣社員に支払われる給与は一定としても、企業が払う消費税込みの派遣費用は、確実にアップさせます。ですから、企業は“派遣切り”を考えます。“派遣切り”が契約社員、パートタイマー、アルバイト等の非正規社員、そして正規社員の雇用増大につながれば良いのです。しかし、人件費が低廉な新興国へのアウトソーシングを誘発あるいは、加速させてしまう可能性があります。その結果、雇用機会は、海外に流出して、失業者が町に溢れるという最悪のシナリオも考えられます。

このような変化を見据えて、税の見直しが必要です。残念ながら、現政権や国会の議論には、そういった変化を見据えての税の見直し、経済政策の立案が検討されているように思えません。

提案ですが、派遣費用は消費税法上、非課税にすること!これは、検討する価値があると解します。オフイスビルの賃借料は、消費税法上、課税対象ですが、個人が借りる住宅の家賃は、消費税法上、非課税になっています。それと同様な取扱いですので、必ずしも、制度上出来ない提案ではないと考えます。


人材派遣業のビジネスは、2008年をピークに減少しており、2010 年度の市場規模は前年度比94.0%の4 4,500 億円でした。日本の労働人口の減少傾向を考慮すると、その規模が増えることはなく、なだらかな右肩下がりになると想像されます。人材派遣業のビジネス規模の4兆円を非課税にすることは、消費税4,000億円が徴収できないことを意味します。しかし、その政策は、4兆円の付加価値(派遣費用を付加価値とする)が日本から消失することを防ぎます。4兆円あれば一人当たり2百万支払って2百万人雇用が確保できます。若年層の人々2百万人近くの雇用を確保できることを考えると、失う機会コスト4,000億円以上の効果があると思います。明るい未来が窺える社会を作ることが大事と考えます。

次回触れる予定にしていますが、消費税の益税問題を解決すれば、1兆円近くの消費税が徴収できます。つまり、バケツの穴をふさぐことで1兆円の消費税が捻出できるのです。派遣費用の非課税化は、歳入にとってマイナスの効果ですが、益税問題を解決することのプラス効果を考えると不可能な政策課題とは思えません。

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