2012年6月6日水曜日

本当にもったいないこと!? 提言その1

Facebook「村田租税政策研究所FBグループ」メンバーのひとり、須藤一郎氏からの投稿を転載します。4回の連載形式でまとめられた興味ある提言です。

今回は第一回投稿記事を紹介します。
(尚、前回5/30にUpした投稿記事は第二回に相当します。ぜひ第一回第二回と続けてお読みください)

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社会保障・税の一体改革の賛否は、財政再建が先か・経済成長が先か・歳出削減が先か、というContextで議論されることが多いが、政策としての一番重要な視点は「経済活動をShrinkさせないこと」のように思われる。一見不要に思える財政支出を称して「もったいない」といわれることがあるが、その財政支出を削減し、その結果として民間の雇用が失われ、既存の設備が遊休状態になれば、一国全体としてみれば、「経済活動がShrinkしている」ことに他ならず、この状況こそ「本当にもったいない」のである。例えば、お金がないときにタクシーを使うことは「もったいない」ことかもしれないが、経済全体で見れば、そのタクシーが遊休状態になることの方が「本当にもったいない」のである。タクシーを使うことが「もったいない」のは、「タクシーを使わなければそのResourceが他のもっと重要なことに転用できる」場合の話であって、そうでなければタクシーを使わないことは「本当にもったいない」ことになりかねない。もちろん、タクシーが超過供給状態であれば、それは競争・淘汰というプロセスを通じて是正されなければならないが、供給量が適正水準であるにもかかわらず、「もったいない」という理由で誰もタクシーを使わなければ、つまるところ、分業=すなわち経済活動など何もおこらないということになる。翻って、一体改革の議論に目を転じると、一方で社会保障の財源がないといわれ、他方で(非正規社員・社内失業も含め)数多くの人的資源が遊休状態になっている状況が生じている。この状況は「本当にもったいない」状況ではないだろうか。一国経済全体が「金がないから遊びに行くのはやめとこうか」という状況にならないよう(すなわち、経済活動をShrinkさせないよう)にするのが財政・金融の役割である。財政支出が一定の役割を担ってきたこの20年が決して「失われた20年」でないことは、この20年の間にどれほど生活の利便性が向上したかを考えれば明らかである。インターネット・スマホ・テレビ・車など様々な面で生活水準は著しく改善され、GDPこそ横ばいかもしれないが、ユニクロに代表されるように、高品質のモノが比較的安価で手に入るようになり、金銭的に単純に換算できない消費量は、20年前とは比べ物にならないはずだ。「本当にもったいない」状況をMitigateするための財政支出の結果として、財政赤字が積み上がったかもしれないが、その反対側で民間部門の貯蓄が積み上がったことも忘れてはならない。この関係は恒等式であり、財政赤字の削減は民間貯蓄の削減に他ならない。次回以降の投稿で、この恒等式に着目しつつ財政赤字がどの程度Imminentな問題なのかについて検討し、一体改革における増税が「本当にもったいない」状況を助長しないかという視点を踏まえ、一体改革の賛否に関する論点を整理したい。


須藤 一郎

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